日本能率協会で講師を務めておられる四元マーケティングデザイン研究室 代表 四元正弘講師からお話を伺いました。
(以下敬称略、役職当時)
マーケティングにおける愛とは何か?
中川
今はIoTが進んで、メールマーケティングや、マーケティングオートメーションといった様々な手法が出てきています。
また、マーケティングのスキルも競争マーケティング、アンバサダーマーケティング、熱狂マーケティングなど氾濫しています。
マーケターの方々も、どれが自分たちにとっていいのかというのがなかなかつかみにくくなっている状態です。
そのような中でドラッカーの基礎を学ぶことはとても重要だと思います。
四元
これは雑談みたいなものですが、最近IOTでいろいろな調査手法が出てきていますよね。
例えば、店頭でも目がどこに向かっているとか、どんな動作をしているとか、全部データで取れます。
ライフハックなどで個人が何時に起きて何してというのも全てわかってしまいます。
最近は、個人の情報を取れば取るほど、その個人が理解できると考えている動きがあると思いますが、それに対して僕はこう言いたいのです。
「奥さんの行動をどんなに旦那さんが根掘り葉掘り知っていても、それで夫婦仲が深まりますか」と。
まさしくマーケティングというのは、企業と消費者の恋愛みたいなもので、そこに愛がないとつまらないと僕は思っています。
愛があるからこそ、文字通り「消費者は商品を愛(め)でてくれる」のだと思ってくれたりします。
僕はそれをマーケティングの愛だと思っています。
それに、広告というのはラブレターだと思っています。
だから消費者のことを何でも知れば、愛が深まるみたいなことを考えたら、絶対ウソですよ。
旦那が根掘り葉掘り、朝から晩まで奥さんのデータを全部取ってごらんなさい。
こんなことまでしている、知れば知るほどわけのわからない人だなと思って、旦那さんは奥さんを嫌いになりそうじゃないですか。
奥さんだって、何で私のことをずっと監視しているのかと嫌になってしまうでしょう?
むしろ愛は冷めますよ。
じゃあ愛は何かというと、するべきいくつかの肝心なことをすればいいだけです。
マーケティングも正しくそうです。
消費者のことを根掘り葉掘り知ることや、たくさんの手法があるからこれを使おうとか、そういう高度化を一概には否定しませんが、その一方で本当に忘れがちなのは本質だと思っています。
本質はそんなにたくさんはなくて、驚くほどシンプルです。
そのシンプルなことをちゃんとわかった上で、新しい手法が出てきたなら、使えるものは使いましょうというのは、すばらしい発想だと思います。
ですが、そのシンプルな本質を抜きにして、新しい手法があるからこれ使おうとか、目的もなくもっと消費者のデータが取れるとかでは、策に溺れているようなものですよね。
そういう意味で、今は新しい手法がどんどん増えているからこそ、むしろ古典的かもしれませんが、ドラッカーを通じてマーケティングの本質に戻ることがすごく重要だと思っています。