日本能率協会で講師を務めておられる株式会社MOMO 代表取締役 高橋澄子講師からお話を伺いました。
(以下敬称略、役職当時)
消費財企業の抱えるマーケティング課題とは?
(高橋)
もともと人の気持ちや行動は合理的ではなくて、一筋縄ではいかない矛盾だらけなものです。
だから、消費者の持っている傾向を心理学的アプローチでぶことが大切です、と訴えているわけです。
商品やサービスが少ない時代は「足りない」「もっと欲しい」という欲求が強かったので「新しいもの」をどんどん買ってくれたし、市場も広がっていきまして。
そして、さらにもっと良い商品を、サービスを、それにまつわる情報をとの欲求も高まっていきました。
でも、商品やサービスを手に入れある程度満ち足りるとそれに慣れてしまう。
だけどそれだけではなんとなくつまらない。つまらないから、いろんな商品を見たり、情報に触れたり、買ってみたりするんだけど、それが心からの幸せ にうまく結びついていかない。
だから「欲しいモノ」はないけれど心から満たされているとわけでもない、現在はそんな状況だと思うんです。
「情報過多」とどう向き合うかが、今のマーケティングの課題であるという解釈でよろしいでしょうか?
(高橋)
商品やサービスそのものを含め、広い意味での情報という意味ではそうだと思います。
消費者も膨大な情報を受け取っていますが、反対にマーケター自身の周りにも情報があふれているわけです。
マーケターからの質問をみると、以前は「どうやったら◯◯のて情報を収集できますか?」という調査方法に関する質問がすごく多かったんです。
今は「情報が多すぎて分析が追いつかないんですけど、どうしたらいいですか?」という悩みが多いんですよ。
マーケッターを取り巻く情報の多さについていえば、IT技術が進んだことで、マーケティング情報の収集や調査環境が大きく変化した影響が大きいと思います。
POSデータが簡単に手に入るようになり、WEBでアンケート調査が短期間で安価に実施できるようになり、マーケターは、大量の定量的なデータを手にしました。
消費者のニーズが見えなくなり、ヒット商品を生み出すことが難しくなったことで、経営者は商品開発やマーケティングの判断に、より客観的に思える数値データによる定量的な分析を求めるようになりました。
しかし定量的なデータの解析・分析中心では、人間心理の深い情報をつかむことは難しいのです。マーケティングの意思決定が、どんどん生身の人間から遠くなってしまう恐れがあります。
定量分析が重視され数字ではつかめない消費者の気持ちや生態から離れてしまっているかもしれないことが、今の消費財企業のマーケティングが直面している大きな問題だと思います。